第2回  ㈱ジャパンシーフーズ 井上 幸一様

株式会社ジャパンシーフーズ

代表取締役 井上 幸一 様

創立 29 年目を迎えたジャパンシーフーズの井上社長に創業当時のお話を伺いました。

もともと家業で魚の加工をしていた井上社長は38歳で独立、起業をされました。 福岡市東区箱崎埠頭の4階建ての工場で実際に魚の加工している現場も見学させていただきました。 「生」を基本としているため加工された商品は、その日のうちに飛行機などで主に全国のスーパー マーケット等へ発送されます。

起業の動機と簡単に創業時の状況について教えて下さい。

父が柳橋連合市場で鮮魚店を経営しており、スーパーやデパートに支店を構えておりました。私たち兄弟はみな、その支店の店長としてそれぞれ店を任され、私も当時の駅ビルで
あった博多井筒屋(現在では博多阪急)で店長を務め、大衆魚から高級魚
まで幅広く色々な魚を販売しておりました。

当時は今まで家にいた女性たちが外で働き始めた頃で、それまで鮮度の良さと品揃えの
多さをウリに魚を販売していた時代から、次第にゴミがでないよう下処理をし、簡単に調理ができるよう切り身にしたものが売れる時代へと変わっていきました。

「できるだけ手間を省きたい」というお客様の声にこたえる為にもバックヤードでの仕込み
業務をさらに強化し下処理して店頭に並べていました。しかし便利で使いやすさを求めるお客様の声は今後さらに大きくなると感じ、切り身に加工した商品を作る工場をもった食品加工メーカーを作ろうと考え起業に至りました。

こうして立ち上げた工場では、鮮魚店同様ふぐなどの高級魚を調理のしやすいよう加工して販売しておりましたが、
しかし鮮魚店と食品メーカーとでは大きくノウハウは違い、旬の魚を扱っていては季節によって忙しさも売り上げにも
偏りが出てしまい、工場をうまく稼働させることの難しさを痛感しました。そこで夏に旬になる「アジ」に目を付けたのです。

アジは夏の時期に沢山獲れる大衆魚でありますが、身は小さく小骨が多くまたゼイゴというアジ独自の硬い鱗が尾びれの
付け根についてます。アジの加工は今まで手掛けていた高級魚に比べると、手が掛る割に加工しても単価は安く、
なおかつ身が小さいため売上を作るにはかなりの数をこなさなければなりませんでした。

しかし、アジは魚屋時代季節を問わずいつでもよく売れていた人気の商材でした。このアジをパック詰めにして、量産
できれさえすれば必ず勝算があると考え、海外より魚を瞬時に三枚卸にする機械を取り寄せ、アジ加工のための工場へと
シフトチェンジを図りアジに特化した加工メーカーへと生まれ変わりました。 「生」のままパック詰めを量産することが可能になり、
全国のスーパー・量販店様からアジに特化した水産加工メーカーとして認知され、取引は全国へと広がって
行きました。

起業して一番の苦労話は何ですか?

売れる商品をつくるまでが一番苦労しました。誰に売るのか相手は分かって
いましたが、「何を売るか」が重要です。また一般のお客様ではなく、スーパー
マーケットなどに鮮魚を卸す仕事なので、プロに買って頂くわけです。

自分たちの販売したい価格とお客様が買いたい価格に差があり、自社商品にいかに付加価値をつけるかが大変でした。度重なる試行錯誤の末、多くの失敗も経験して3年程
掛ってようやくヒット商品に結び付きました。

売上が上がり始めた頃から次の課題として出てきたのが「仕組みを作る」ということでした。10億の壁にぶつかり経営の書籍を読みあさり、その時にランチェスタ―の法則に出会いました。そこで戦い方には強者の戦略と弱者の戦略という2通りの戦い方があり、大手の真似をしても失敗してしまうこと、そして弱者は弱者なりの戦い方があることを知りました。黒子は黒子なりのやり方を見つける事が大切なのだと思いました。

そういった苦しい時期はどうやって乗り越えましたか?

諦めないことです。99%無理だといわれても 1%の可能性があるならそこにかけてみようと思っていました。周りの従業員や家族など不幸にしたくないという思いが強かったのです。やり続ければ困難な事でも
モノになると信じていました。

工場で働かれている従業員の皆さんの挨拶が徹底されていて驚きました。

デパートで鮮魚を販売していた頃に、100円の商品を購入したお客様にも差別なく心を込めてお礼の挨拶をしていました。そこでどんなお客様にも感謝の思いを挨拶で伝えることの大切さを学びました。

また工場を見学に来ただけの方も、この会社に関わった人である以上お客様であり知らん顔はあり得ません。社内に関わる人はたとえ業者さんであってもお客様だと思っています。

ジャパンシーフーズの今後の展開を教えて下さい。

100年企業を目指すことです。
企業とはもともと衰退していくように出来ています。一番繁栄している時期、成熟期にいかに新しい商品やサービスを考えていけるか、それを続ける事で企業は存続していけると思います。所謂、「残る企業」ですね。 新しい展開は目指すけれど、今後もベースはアジ、サバを使っていきます。青物は体にもいいですし。アジ、サバで日本一の企業を目指します。

  ありがとうございました。
  平成26年9月30日取材

ジャパンシーフーズ

  • 経営理念 私たちは鯵と鯖で世界の人々を健康にし、豊かな食生活を創造していきます。
  • 創業:昭和62年7月
  • 事業内容: 水産加工業 (鯵、鯖の加工、 卸売り)
  • 本社:〒811-1302 福岡市南区井尻5丁目20番29号
  • TEL 092-593-7662 FAX 092-593-7663
  • 箱崎工場 〒812-0051 福岡市東区箱崎埠頭 5-9-29
  • TEL 092-632-2135 FAX 092-632-2136